フォトジェニックのバリューは高い


つるとんたん」という外食チェーンをご存知だろうか?


テレビにて著名人が何人も利用した話をしていて知り、つるとんたんという名前の響きや、バカでかい器でうどんが出てくるという断片的な情報は僕の好奇心をくすぐるには充分だった。


呑みに行って話すわけでもないのに飲食店に、しかもわざわざ東京で、しかもうどん屋に、誘えるほどの友人もいなく、一人カラオケから始まり、一人回転寿司、一人焼肉をこなした経験のある自分にとって、こんな店一人で行ったるわ、と就活時期の某日、夜行バスまでの暇つぶしとして利用した。



時刻はまもなく23時になろうかという頃であったが、店内は賑わっていた。

店によっては明け方4時までやってるらしい。

芸能人から二次会で利用した話が聞こえるのもうなづける。


一人で、と伝えるとすぐに案内された席は3人は座れるかという長椅子だった。

長方形のテーブルをしきりで分け、片面ずつ使わせている。


たかが一人に与えられた莫大なキャパシティにとまどった結果、初めは少し端に座り、もう一人座れるスペースを空けて置いたが、ここにもう一人座られてもな、と立ち位置(座ってるのだが)を真ん中に戻す。

なんだか落ち着かない。


落ち着かないのはそれだけではない。

店外からはしきりだと思っていた現在向かいあっている壁。

開放感のためか、胸のあたりまで向かい側が空いているのだ。


悪い予感は的中した。

直後にカップルの来店。

しかも二人ともシックに黒で決めやがって。

東京人かよ。


10分ほどしてうどんが来た。

初来店だしシンプルに、ノーマルなうどんと天ぷらの盛り合わせ。

値段は1000円ちょいとメニューの中では平均的だが、うどんに出す価格としてはちょい寒い。


何処か目の前の空間から視線を感じたのか、そそくさと無音カメラでその馬鹿でかい器に入ったうどんを撮影した(後にブレブレの写真を確認することになる)私は、ついにうどんへと箸を伸ばす。



夢にまで見た芸能人御用達の店。

創作高級うどん。

バカでかい器の独自性。



うん、普通。

普通だわ。

器のサイズ的に食べづらいからなんなら丸亀の方がうまいわ。

対面空いてて落ち着かないし、丸亀の圧勝だわ。





写真もろくに取れないくせにうどんに1000円もかけてしまった事実は僕の心を深くえぐる。

少し広くなった財布と心の隙間に通る風は、5月に吹くにしては少し季節外れな寒さだった。